住まいは永く使うものであります。暮らしはじめと10年後、20年後では家族構成も生活スタイルもきっと変化していることと思います。諸外国と比べて日本の家の寿命が短いのは家の耐久性の問題ではなく、家族の生活の変化に合わせられなくなるからだとも言われています。
可児工房の住まいはあまり仕切らずに空間を開放的に使うようにしています。子供部屋もはじめから人数分の部屋を設けるのではなく、子供の成長に合わせて必要なときに変化をできるように考えておきます。なるべく使い方を限定せず、できる限り壁などは取り外せるようにして、柔軟に生活の変化に対応できることが大切だと考えます。
家族が成長するように、住まいも成長し変わっていく。常にその家族にとって大切な居場所でありたいと思います。
お施主様とプランの打ち合わせをしていると、まず面積の話がでてきます。そのほとんどは同じ予算でもう少し広くしたい、他社はあと数坪大きいというような話です。確かに限られた予算の中で出来るだけ広くしたいと思うのは当然の要望かもしれません。ただそれがすべてになってしまうのは少し寂しい気がします。○○坪、○○平方メートルといった数字だけでその良し悪しを判断するのではなく、その空間がどれだけの豊かさをもち心地よさを持ち合わせているかで判断するほうが大切であると考えています。
住まいを少し小さくすれば敷地に対する建物の割合が小さくなり、隣家との距離も生まれ、庭や道路に対して緑を配すことが可能となります。また使用する材料の量も減り環境に優しくなり、生活で使うエネルギーも少なくてすみます。大きさに充てるコストを、より質を高めるためのコストに充てることができるのです。
私たちが提案する建物は、他社と比較するとひとまわり小さいかもしれません。
要望されたとおり、広くつくることは簡単です。ただそれほど広くなくても心地よい居場所があちこちに散りばめられ、質も高い空間を造ることのほうがより難しくて、知恵と技術が必要であり、そうして頭を悩ませるからこそ、きっと家づくりも愉しくなるのです。